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石破茂と自民党の移民政策がなぜ支持率低迷を招いたのか?参院選敗北の背景を解説

  • 執筆者の写真: Kimi
    Kimi
  • 9月7日
  • 読了時間: 5分
石破茂と自民党の移民政策がなぜ支持率低迷を招いたのか?参院選敗北の背景を解説
石破茂と自民党の移民政策がなぜ支持率低迷を招いたのか?参院選敗北の背景を解説

2025年の参院選で与党が敗北し、石破茂首相は退陣に追い込まれました。背景には物価高や政権運営の不安に加え、「外国人受け入れ(実質的な移民政策)」をめぐるメッセージの混乱と世論の不安がありました。参院選では移民・観光に厳格な姿勢を掲げる勢力が伸長し、与党の支持を切り崩しました。


① 「移民」が争点化した理由

  • 選挙で“厳格化”を訴えた勢力の台頭 2025年の参院選で、外国人受け入れに厳しい「Japanese First」路線を掲げる新興右派が大きく議席を伸ばし、与党は参院の過半数を失いました。移民・観光・生活コストへの不安に訴えるオンライン動員が奏功したと報じられています。

  • 「賃金を押し下げる」との物語が浸透 有権者の一部に、外国人受け入れ拡大が賃金下押しにつながるとの見方が広がり、参院選では「移民抑制」「減税」を訴える勢力に票が流れました。


② 石破政権・自民党が示した「受け入れ拡大」と「抑制」の同居

  • 実需に対応する“拡大”の側面 少子高齢化による人手不足を背景に、政府は2019年に創設された特定技能制度の運用を続け、2024年度からの5年間で特定技能(熟練人材)ビザの上限を82万人とする枠組みを示してきました。外国人住民は**2024年末時点で約377万人(前年比+10.5%)**と過去最多を更新しています。

  • 技能実習の抜本見直し 問題の多かった技能実習制度を廃止し、権利保護を強化した**「育成就労制度」**へ移行する方針が決定(27年開始見込み)。一定のスキル蓄積に応じて在留の継続や上位資格への移行を可能にする設計です。

  • 一方で“抑制”のシグナルも 選挙前の7月、政府は**「外国人に関する懸念」に対応する府省横断組織を設置。運転免許切替や不動産取得に関するルール見直しなどを検討し、「秩序ある共生」**を掲げました。 さらに8月末の政府報告書は、外国人住民数に上限(キャップ)を検討すべきだと提起。受け入れの社会的影響を検証し、必要なら一時的な数量管理も議論するとしました。

受け入れ「拡大」と「抑制」のメッセージが短期間に同居したことで、与党の基本方針が分かりにくくなり、賛否双方から不信を招いた――これが世論低迷の第一の構図です。

③ 支持率が伸び悩んだ4つの理由

  1. 政策メッセージの一貫性欠如 上記の通り、実需に応じた受け入れ拡大(特定技能・制度刷新)と、選挙局面での抑制・監視強化が併存。党内でも受け入れをめぐる賛否が割れており、**「本音はどっちなのか」**という疑念を強めました。

  2. 生活不安と“移民”の接続 物価上昇で暮らしが圧迫される中、賃金停滞の原因を受け入れ拡大に求める言説が浸透。政権は物価・賃金対策の説得力を示し切れず、移民論争に押される形で評価を落としました。

  3. 地域の受け入れ能力(住宅・教育・治安・観光)の不安 政府自身が**オーバーツーリズムや制度の“悪用”**への対処を掲げたことで、不安認識を事後的に補強した側面もあります。実害データと対応策の開示が後手に回った印象を与えました。

  4. 選挙力学:厳格化を訴える勢力の躍進 “日本人ファースト”を掲げる勢力がオンラインを基盤に若年男性層などを取り込み、移民規制を争点化。与党の基盤を侵食しました。


④ 「移民政策」―具体的には何を指すのか

  • 特定技能制度の数量・設計 ・5年で最大82万人という量的目標(特定技能の上限設定) ・熟練人材の長期就労や家族同伴が可能となる上位資格(制度設計上の“定着”ルート) ・地方・産業ごとの人手不足に応じた受け入れ枠運用 など。

  • 技能実習→育成就労への置き換え(権利保護・職場移動の緩和・スキル評価の明確化)

  • 共生と秩序維持のための横断対応(運転免許・不動産取得の見直し、生活ルールの周知・執行強化)

  • 将来的な「数の管理」論(外国人住民の総量やビザ類型ごとの時限的キャップの是非を検討)

要するに、日本は**人手不足対応として“選別的に受け入れる”**一方、**社会的摩擦の増加を警戒して“抑制・管理”**のオプションも並行検討している――この二面性こそが今の「実質的な移民政策」の核心です。

⑤ 世論回復への処方箋(実務的提案)

  1. 一貫したKPIの提示 単なる人数目標ではなく、地域別の受け入れキャパシティ(住宅・学校・医療・交通)指標と連動させ、進捗を毎四半期で開示。

  2. “短期労働”と“定着”の線引きの明確化 技能ルートの要件・期間・家族要件・永住への道筋を図解で統一説明(制度乱立の印象を除去)。

  3. データで不安に向き合う 賃金・犯罪・観光の混雑など、論点ごとに客観データと対策を同時公開(“印象”ではなく“数値”で議論)。

  4. 賃上げ・自動化とセットで語る 受け入れだけで賃金が下がるわけではないことを、賃上げ支援・省人化投資とパッケージで示し、ゼロサムの物語から脱却。


⑥ 結語

石破政権と自民党の支持率低迷は、物価高や政権不信という基礎疾患の上に、受け入れ拡大と抑制の同居という政策メッセージの不整合が重なった結果です。参院選では「より厳格に」を掲げる勢力が伸長し、与党は打撃を受けました。他方、8月には一時的な支持率の持ち直しも観測され、説明と実行の一貫性次第で挽回の余地はあることが示されました。



注:8月世論は一時改善したが、7月時点で自民党支持はNHK調査で2012年以降最低水準との報道があり、全体としては低迷が長引いた。


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